株式会社島津製作所
以下は一部抜粋です。記事全文と運用イメージはこちら!
島津製作所は、2014年にSpaceFinderを導入し、現在、3つの事業部と「ものづくりセンター」、英国子会社で活用している。今回は、航空機器事業部に訪問し、航空機器産業の厳格な品質マネジメントにおけるIT化の必要性と、変更管理・不適合対応での活用事例を取材した。
嵯峨根氏航空機器の品質マネジメントは、ISO9001をベースにしたJISQ9100が適用されています。これは、米国のAS9100、欧州のEN9100と同内容で、全世界標準で運用されています。要求事項は多くの箇条で追加されており、これに機体メーカーの個別要求事項も加わって、厳格な管理が求められています。一例ですが、航空機は万一事故が起こった場合に機体の検証が困難な事が多いため、製造過程全体を常にトレースすることが求められます。また、同一機種がバージョンアップしながら数十年にわたって製造され、その間に様々な変更が発生。海外サプライヤーや顧客支給品への対応もあります。そのため、変更管理と不適合対応には多くの労力がかかっていました。一方、その業務は紙ベースの非効率なもので、常々この状況を変えたいと考えていました。
池田氏我々の事業は受注生産方式で、厳格なトレースを行っているため、変更や不適合が発生すると、対応が終わるまで生産が滞留します。そのため、処置判定等を早く行うことが重要であり、緊急の場合は人が書類を持って走ることが常態化していました。また、手書き書類を管理するために台帳にいちいちデータ入力したり、書類の転記作業が必須。離れた建屋から品証フロアまで来て書類をコピーする姿を見て、早く電子化しなければ、と心が痛んでいました。
池田氏変更は、社内起案と業者起案をあわせて年間400件程度発生。『審査記録書』を起票し、再試験の要否や該当法令等の確認、強度・機能・性能・耐久性・安全性・整備性・互換性・重心位置など、十数項目での影響の有無を審査します。エビデンスも一元管理。処置が終わっても顧客の承認が出るまでは製造できませんし、顧客から官の承認を求められたり、航空機製造事業法により、製造・修理に許可が必要な製品もあるので、対応に漏れが無い様に管理を行っています。情報が瞬時に伝わり複数部署で並行審査を行うことで、審査期間が短縮。進捗の可視化とアラートメールにより変更処置の期限管理も強化しています。
嵯峨根氏図面が変更されると、それに伴って手順書の変更が必要になるなど、担当部署をまたがって変更項目が派生します。ですので、部署間で情報を共有し、連携をとりながら抜け漏れなく、正しい処置を正しい手続きで行うことが非常に大事。今は、『処置状況票』でそれらの進捗を一元管理でき、すべての処置が完了していることを確認できます。また、審査過程で過去の変更履歴も確認するのですが、以前のように書類倉庫に行って紙を探す必要が無くなり、早く正しい判断が行えるようになりました。
池田氏不適合が発見されると、製造部門が『不適合品報告書 兼 事前審査書』(以下、不適合品報告書)を起票します。生技が原因・対策・現品処理、帰責部門、対官手続きの要否等を入力し、品証が判定を行います。ここまでは全件進み、案件によって技術部門による判定、さらに、顧客判定に進みます。最終的に、判定が確定した上で審査がクローズします。クローズ後に判定が変更になる場合は、元の情報を引き継いで、新たな不適合品報告書を改訂起票できるようになっています。また、クローズ後は現品処置が完了するまで状況をフォローアップし、一元管理されます。
池田氏不適合は、品質基準が厳しいこともあり、年間で数千件発生しています。紙の持ち回りが不要になったことも、件数が多いだけに効果は大きいです。また、着荷番号のバーコードを読み取ると生産管理システムから部品情報や供給者情報等が自動入力されたり、現場PCにWebカメラを備え付け、現物を撮影してそのまま帳票に貼り付けられるようにするなど、現場の手間を極力減らす工夫も行っています。また、所在不明による書類の再発行や、以前は頻発していた記載漏れもなくなりました。
嵯峨根氏品証判定完了までの平均日数は、2016年度(紙帳票運用)に比べ2017年4月~9月(電子帳票運用)では約3/4に短縮しています。また、一両日(起票当日か翌日)に完了している割合が、約10%から約18%に増加。以前は緊急の場合に人が走り回って一両日で対応していたのが、今は緊急でない場合も含めて、一両日で完了してしまう状況です。このように、リードタイム短縮と工数削減の両面で効果が現れています。
池田氏『再発判定ボタン』を押すと、審査中の不適合を過去データと照合。部品番号・不適合内容・原因がすべて一致した場合に再発フラグが立ちます。再発一覧もワンクリックで表示でき、詳細情報にもリンク。過去の経緯を踏まえて対策を検討することができます。『再発判定ボタン』を押さなければ品証判定に進めなくすることで、運用の徹底を図っています。
池田氏『対策再検討依頼票』も、今回作った新しい仕掛けです。今は、再発であるにもかかわらず前回同様の対策になっているケースを重点的に洗い出し、品証にて対策の妥当性を精査。対策が不十分な場合はこの帳票で生技の判定担当者に再検討をリクエストし、期限を定めて進捗をフォローします。今後は、再発以外にも様々な切り口でチェックをかけていきたいと思います。
池田氏検出した不適合は在庫部品にも潜在している可能性があるので、確認する必要があります。『在庫点検指示票』を起票すると工程担当部署にタスクが流れ、在庫の有無を確認。在庫がある場合は検査職場に指示を出し、不適合が発見された場合は『不適合品報告書』を新規に起票します。
本社 | 京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 |
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資本金 | 約266億円 |
従業員 | 11,528名(2017年3月31日現在) |
事業内容 | 1875年に京都で創業して以来、「科学技術で社会に貢献する」という創業者のパイオニア精神を受け継ぎ、分析機器、計測機器、医用機器、航空機器、産業機器という5つの領域で事業を展開している。航空機器事業では、航空機搭乗者の「快適環境」「飛行安全」「負荷軽減」の実現を目指し、エア・マネジメントシステム、フライト・コントロール・システム、コックピット・ディスプレイ・システム、エンジン始動システム用機器を開発。さらに、宇宙関連機器や、南極での地磁気観測にも活躍している磁気計測装置も手がけている。 |
取材日:2015年5月22日
受付時間 9:00-17:30(土・日・祝除く)
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