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ものづくりの上流から下流まで、品質マネジメント業務をトータルにIT化

ニデックモビリティ株式会社

ニデックモビリティ株式会社

ものづくりの上流から下流まで、品質マネジメント業務をトータルにIT化。現場業務や課題を熟知する品質部門が自らシステムを開発し全社に展開。

以下は一部抜粋です。記事全文と運用イメージはこちら!

ニデックモビリティは、ものづくりの上流から下流まで、様々な品質マネジメント業務をIT化。従来の紙管理から脱却することで、業務管理水準の向上と生産性の向上を実現している。部門を跨るQMS帳票はすべて電子化され、必要に応じてワークフロー機能を追加。帳票相互間や基幹システムとのデータ連携も構築し、柔軟性と拡張性を備えた大規模なシステムを構成している。特筆すべきは、これらのシステムを、品質部門が自ら設計し構築したということ。QMSを熟知し、その遵守と改善を担う品質部門が実現した情報基盤の詳細をご紹介する。

背景・目的

複雑・高度に作り込んだNotes業務アプリケーションに対応できる機能性と、開発効率の良さを評価

品質統括部 品質企画部 部長 宮下 将之 氏

品質統括部 品質企画部
部長
宮下 将之 氏

宮下氏この取り組みの始まりは、2017年に遡ります。その頃、ものづくり力の進化を目指し、トップ主宰の『品質革新会議』で、様々な部門が施策を発表していました。従来の延長線ではない、大きくギアチェンジした施策が求められており、そこで品質企画部から提案したテーマが『品質マネジメント業務のIT化』だったのです。当時は、品質マネジメント業務を紙帳票で行っていたのですが、ルールが徹底できていなかったり、わざわざ情報を探して集計作業をしなければ進捗がわからず、監視も不十分な状況でした。紙管理に起因するムダや非効率も随所にありました。例えば、『異常・不適合報告書』は年間で千数百件に達し、紙を回覧して処理するのは、もう限界になっていました。データを蓄積して分析や改善活動に活用することも困難でした。品質マネジメント業務のIT化は、このような状況から脱却し、業務管理水準と生産性を向上する切り札になると考えたのです。

システム選定

ものづくりの現場で求められる、難易度の高いシステム要件をすべてクリア

この提案が承認され、次年度の導入に向けてシステム選定を開始。ワークフローや文書管理等のキーワードで候補をリストアップすると共に、ユーザー部門にヒアリングして要件リストを作成。候補を絞り込んだ上で、詳細に検討を行った。要件リストは、製造業特有の複雑な業務プロセスに対応する項目が盛り込まれた、難易度の高い内容。それらの項目をすべてクリアしたSpaceFinderが2018年9月に導入された。

宮下氏システム要件で特に重視したのが、専用のプログラミング言語を知らなくても操作できる開発用のGUIが整備されていることでした。品質マネジメント業務は継続的な改善が当たり前です。当社は特定の系列に属しておらず、様々なお客様と取引をしていますので、それぞれのお客様からの要求に対応しなければなりません。また、何か問題が発生すると、再発防止のためにチェック項目を追加するなど、業務改善のための改修も発生します。しかし、改修を外部に委託すると、その都度費用がかかりますし、何より、タイムリーに対応できないのが困ります。自動車業界では、問題発生時の迅速な対応が重視されますので、業務システムについても、すぐに改修する必要があるのです。さらに、SpaceFinderはダイキンのものづくりの中で生まれたということも、採用の決め手になりました。業種は違ってもやるべきことは一緒のはずですので。

立ち上げまでの経緯

QMSや業務課題に対する知見をシステムに注入。QMS全体をIT化するからこそ効果も大きい

SpaceFinderは品質企画部主導で導入され、QMSに関わる帳票/ワークフローの作成も品質企画部にて行われている。品質企画部の立ち位置と、品質部門が自らシステム開発を行うことの意味についてお伺いした。

宮下氏以前から、部門をまたがる品質マネジメント帳票の維持管理は品質企画部が担っていました。帳票がIT化しても我々のミッションに変わりはありませんので、SpaceFinderでの帳票/ワークフロー作成や改修についても品質企画部が行っています。我々が担当することで、これまでの仕事の仕方や経験をシステムに活かすことができました。また、我々はQMSの内部監査も行っていますので、監査で問題点を指摘し、その解決策としてIT化を提案することで、スムーズに適用を拡大することができました。品質マネジメント業務のIT化がうまくいったのは、こういう我々のミッションや立ち位置があったからだと思います。これを、例えば開発部門だけで行おうとしていたら、おそらく開発の業務だけで終わっていたと思います。でも、ロスが生まれるのは部門をまたがる部分ですし、IT化の効果も部門横断の方が断然大きいのです。

品質マネジメント業務全体を視野に入れつつ、まず、発行件数が膨大な『異常・不適合報告書』をIT化。次いで、ユーザー数の多い『テーマ管理ポータル』というように、効果が大きく見込まれる業務を優先的に展開し、その後は、ものづくりの上流から下流に向けて順次展開していった。ニデックモビリティでは、このシステムを『QWF(QMSワークフロー)』と呼称。「QWF化しましょう、という合言葉でIT化を進めています」と宮下氏は語る。

運用状況

品質マネジメントを中心に、90個におよぶ帳票/ワークフローを全社・グローバルで展開

宮下氏現在、約70個の帳票/ワークフローが稼働しており、2023年3月までに、あと20個程度追加する予定です。品質マネジメントがメインですが、それ以外に、環境マネジメントや、以前使っていたワークフローシステムからリプレースした該非判定、人事系、投資系の決裁業務等にも適用しています。実際に使ってみて、SpaceFinderは当社の仕事のやり方とかなり親和性が高いと感じています。ユーザー数は現在751人で、国内4拠点のほぼ全部門と、海外13拠点で活用しています。運用管理は品質システムグループが統括し、部門間をまたがるQMS帳票/ワークフローの開発やメンテナンス、改善を一手に行っています。QMSの改善は現場でも行っていますので、開発部門や工場でも帳票/ワークフローの改修を行えるようにすることで、スピーディな対応を可能にしています。経営・経理等の用途についてはIT部門が担当しています。

SpaceFinderは、「今では、無くてはならないものになっています」と語る宮下氏。システム立ち上げ時には自ら帳票/ワークフロー作成を行った同氏に、構築時の苦労をお聞きした。

宮下氏具体的な要件を作り込むためにユー ザーにヒアリングをすると、いろいろな要望が出てきます。SpaceFinderは試作した帳票でも入力して挙動を確認できるので、実際に触ってみると欲が出るというか、紙帳票ではできなかったことをいろいろやりたくなるようで、試作段階でも追加の要望が出てきます。SpaceFinderは機能が多く、リクエストを受けると何でもできてしまうので、運用の煩雑さも考えながら要望を取捨選択し、落とし所を見つけるのが、苦労したといえば苦労した点でしょうか。

品質統括部 品質企画部 品質システムグループ 河野 司 氏

品質統括部 品質企画部
品質システムグループ
河野 司 氏

河野氏ユーザーからいろいろな要望が出てきた時は、「とりあえず今抱えている問題を解決することにフォーカスして、プラスアルファの機能は次の改修で反映しましょう」という進め方をしています。改修は頻繁に行っていて、『異常・不適合報告書』はバージョン8まできています。顧客要求変更への対応以外に、ユーザビリティ面でも、ユーザーの意見を踏まえて、画面構成を変更したりしています。

ものづくりの上流から下流まで、品質マネジメント業務をIT化
ラフにプロトタイプを作成し、実際に触りながら仕様を詰めていったり、運用負荷を考慮しながら段階的に機能を増強していくなど、柔軟な運用が可能なことも、SpaceFinderによるシステム内製化のメリット。一方で、システム連携が容易なSpaceFinderの特長を活かし、基幹システムを補完するような使い方も行われている。
経営企画部 経営情報プラットフォームグループ グループ長 鍋本 淳一 氏

経営企画部
経営情報プラットフォームグループ グループ長
鍋本 淳一 氏

鍋本氏基幹システムのマスター情報をSpaceFinderから参照したり、逆に、基幹システムで管理しているマスター情報の登録フローをSpaceFinderで回して、承認後に基幹システムに反映するというような連携を行っています。承認フローのような仕組みをスクラッチで開発するのは効率が悪いですし、基幹システム側でそのような機能を備えていても、そのためだけにライセンスを持たなければならない場合がありますので、SpaceFinderと連携する方が効率的だと思います。新商品を立ち上げる際に、品番や原価、MRPパラメータを基幹システムに登録するフローが回るのですが、そこが紙帳票のままですし、類似したケースは他にもありますので、活用していきたいと思っています。

経営企画部 経営情報プラットフォームグループ グループ 前田 昌宏 氏

経営企画部
経営情報プラットフォームグループ グループ
前田 昌宏 氏

前田氏販売価格の決裁を行うワークフローもSpaceFinderで作成しています。承認フローを関係者に回し、決裁がおりると、その価格が基幹システムに登録されます。

導入効果

QMSのルール順守、リアルタイムでの状況監視と定期的な刈り取りの徹底

宮下氏以前のように、情報を足で探したり、発行した帳票の一覧表を作るなど、『管理のための業務』をしなくても、リアルタイムで状況がわかるようになりました。マネジメント工数が削減され、ユーザーからも「状況が見えるようになったので助かります」、「すごく楽になりました」という声をもらっています。例えば、『異常・不適合報告書』では、一定期間を過ぎても完了していない案件を一覧の中で色分け表示すると共に、アラートメールが送信されます。これらの案件は、管理担当者が集中的に刈り取りを行います。『異常・不適合報告書』は年間で千数百件も発行され、様々な理由で当初の設定期限よりも対策が遅れる場合があるのですが、それらが放置されることなく、きちんと刈り取りができる体制になっています。

宮下氏従来の課題であったQMSのルール遵守については、記入すべき項目をシステム上で必須条件にすることで解決しています。必須項目は案件に応じて指定できます。事情により、その時点で必須項目を記入できない場合は、より上位の承認者にフローが切り替わり、承認者のコメント記入を必須にすることで、フローを進められます。このように、入力項目が的確に記入され、承認フローを通すことで、業務品質が向上できていると考えています。

ものづくりでは、必須項目が記入時点で不明だったり、期限を優先して前倒しで業務を進めるなど、その時々の状況に応じて臨機応変の対応が求められる場合がある。SpaceFinderでは、条件によって承認ルートや入力項目、必須事項を切り替えたり、ワークフローが進んだ後でも未記入項目を追記できるなど、製造業ならではのニーズに対応した柔軟なシステム設計が可能になっている。

今後の展望

グローバル展開とRPAの活用、環境マネジメント業務のIT化を加速したい

宮下氏現在、品質KPIをグローバルで集計する『品質KPIポータル』を作成しています。環境マネジメントへの展開も推進していく予定です。また、海外拠点からもSpaceFinderを使いたいという声が出ていますので、現地でも帳票/ワークフローの作成・編集ができるように体制を整備していく計画があります。

宮下氏RPAの活用も始めています。例えば、不具合で顧客から返却された現品を解析し、是正が必要な場合は、『異常・不適合報告書』にフラグを立てる処理をRPAで行っています。また、『品質KPIポータル』では、失敗コストが現地通貨で記載されて来ますので、日本円に換算する処理もRPAで自動化する予定です。

お客さまプロフィール
ニデックモビリティ株式会社
本社 愛知県小牧市大草年上坂6368
資本金 50億円
従業員数 4,344名(2021年4月現在) 単体990人 海外子会社3,354人
事業内容 カーエレクトロニクスに不可欠な車のボディ制御に使用される各種コントローラやスイッチ、センサを中心とした製品を提供。モビリティ社会における社会課題の解決に向け、車載用電子制御技術を進化。安全・安心、環境への貢献度を高めるべく、コネクテッド・自動運転・電動化に必要な製品の開発に力を入れている。
ニデックモビリティ株式会社
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