株式会社良品計画
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無印良品は、生活の「基本」と「普遍」を重視する価値観のもと、衣食住がワンストップで揃う幅広いアイテムを提供。生活者視点のアイデア溢れる商品が世界中で多くのファンを獲得しているが、品質保証においても進化を続けていることをご存知だろうか。今回の事例では、その集大成となる『モノづくり統合システム』構築についてご紹介する。ファブレスメーカーや製造小売業はもちろん、サプライヤ管理や案件管理等に課題をお持ちの幅広い業種で参考にしていただける取り組みとなっている。
今澤氏当社は約900の工場と提携し、食品・衣服・生活雑貨分野で約7,000アイテムを展開。スペック競争や価格競争とは一線を画し、「暮らしの中で何が必要なんだろう」という生活者重視の思想で商品作りを行っています。
今澤氏しかし、「商品を仕入れて売る」小売業の意識故か、品質保証体系が粗かったですし、商品カテゴリーが幅広いことから業務プロセスが部署(デパートメント:デパ)任せになりがちで、その業務レベルもデパや個人間でバラつきがありました。情報が分断していて、品質保証部(以下、品証)の目が届きにくいことも問題でした。そこで、2015年から品質保証体系を整備し、新商品開発プロセスについても見直しを行ったのですが、依然として紙・Excelベースの業務だったため、書式や管理方法で亜種が生じたり情報が散在したままで、状況を掌握しきれない、ルールを徹底しきれない状態が続いていました。さらに、工場認定のプロセスにも踏み込んでいく必要がありました。当社は自社で設計・製造を行わないので、どれだけ優良な工場と取引できるかが勝負。しかし、その認定プロセスに品証が入っておらず、手続きや判断基準もデパ毎にバラバラなのは大きな問題で、どうすれば良いか悩んでいました。
今澤氏システム化をきっかけにして、商品開発や工場認定、変化点管理等の業務を品証が一気に束ねるチャンスだと思いました。品質保証体系に沿った業務が定着しているように見えても、品証がうるさく注意しなくなったらどうなるかわからないという危機感を強く持っていましたので、人に依存しなくてもルールに沿って仕事が回る仕組みが必要だと感じていました。ノウハウや事例が蓄積されることで、業務レベルのバラつきを抑えることも可能になります。
今澤氏SpaceFinderは必要な機能が揃っていましたし、何より、自分でシステムの構築や改修を行えるところが大変魅力的でした。情報システム部が多忙で、順番待ちに並ぶといつになるかわからない状況でしたので、「情シスに頼まなくていいんだ」というのが導入決定ポイントとして一番大きかったですね。
今澤氏WGには、食品部、衣服・雑貨部、生活雑貨部から課長クラスが1~2名、品質保証部長、当時あった生産部の部長に入ってもらい、週一で開催しました。WGメンバーは部門の代表として参加し、部門に持ち帰って意見収集して、それを持ち寄って議論し、最終決定を部門に伝える役割なので、課長クラスでなければ機能しません。ですので、意思決定ができる課長クラスをメインに据えたのですが、それが成功要因の一つだったと思います。また、必要に応じて、冷静なアドバイスをしてくれそうな人、製造等に知見のある人をアドバイザーとしてメンバーに加えました。実際に動きだすと、狙い通りにいろいろな人が機能してくれたので、やはりWGの人選は大事だと思います。
今澤氏まず、新規工場認定の仕組みを2018年8月にリリースしました。ダイキン工業の構築支援サービスを利用しましたが、構築終盤からは自分でも修正・ブラッシュアップを行い、予定より1ヶ月程繰り上げて完成しました。次に、変化点管理と重大品質案件記録を2018年10月にリリース。これは一から自分で構築しました。構築で苦労したことは特に無かったですね。SpaceFinderに関しては、構築からマニュアル作成、社内説明、運用管理等を一人で行っています。
今澤氏新規工場認定は、事前調査→工場視察・課題指摘→改善→工場監査→認定申請という流れになります。これらの業務を4つの電子帳票が連携して行います。システム化に伴って、書式の統一や承認フローの見直しを行うなど、様々な業務改善も実施しました。
今澤氏PD担当者が取引先・工場から工場調査票(Excel)を入手し、『工場基本情報帳票』を起票してドラッグ&ドロップすると、調査票の記載内容が帳票に展開されます。工場認定に必要な各種資料(組織図・工場配置図等)も添付します。次に、工場の視察を行い、『改善指摘事項管理シート』を起票して課題・指摘事項を入力。工場が対策を行うと、その内容も反映します。この部分でもExcel入出力機能を活用。工場認定後の試作確認や量産確認、不具合発生時や定期訪問でも『改善指摘事項管理シート』を起票し、その工場における課題・指摘事項を一元管理しています。
今澤氏工場側で課題・指摘事項への対策が完了すると工場監査を行い、改善状況の確認と工場評価を実施します。以前はデパ間で不揃いだった評価項目を4タイプに集約し、その商品カテゴリー用のチェックリストが『工場評価シート』に表示されるようになっています。このリストに沿って監査を行い、評価結果を入力すると、総合評価を自動計算し、判定(合格/再監査/不合格)結果が表示されます。監査に合格すると、『工場認定申請書』を起票。『工場基本情報帳票』と連携して工場認定用の資料が自動参照されたり、『工場評価シート』と連携して評価結果のレーダーチャートが表示できるなど、工場認定に必要な情報が『工場認定申請書』に集約されます。また、判子リレーから電子承認に移行したことで業務が効率化。承認者の海外出張による滞留がなくなり、認定までのリードタイムも短縮しています。工場調査票が添付され、『改善指摘事項管理シート』と『工場評価シート』が起票されていなければ認定申請できない仕組みにすることで、標準プロセスの遵守をサポートしています。
今澤氏新規設備を導入したり、建屋を増築したり、従業員数が増減するなど、工場の状況は変化します。新製品立ち上げや品質改善で工場に行く際には最新の情報が必要なのですが、担当者に依頼してもすぐに出てこない場合があるので、いつでも最新情報を入手できるのは便利です。
今澤氏新規設備を導入したり、建屋を増築したり、従業員数が増減するなど、工場の状況は変化します。新製品立ち上げや品質改善で工場に行く際には最新の情報が必要なのですが、担当者に依頼してもすぐに出てこない場合があるので、いつでも最新情報を入手できるのは便利です。
今澤氏店舗に販売停止指示を出した場合は『重大品質案件記録カード』を起票します。4ページ構成で、商品情報(販売期間、製造期間、個数、販売チャネル等)と不具合内容、経緯と不良原因・暫定対策、原因分析、そして恒久対策までを管理。1つの案件で、初回報告(速報)、中間報告(品質向上委員会)、最終報告(対策完了時)を行うのですが、1つの帳票に情報を集約しつつ、それぞれのタイミングで申請ワークフローを回せるように工夫しています。これも、以前はExcelで管理していたのですが、システム化したことで情報がタイムリーに共有化されるようになり、品質向上委員会(月次の定期品質会議)の参加メンバーが経緯や対策等を事前に確認できるようになりましたし、報告資料が散在することもなくなりました。Excelから成功失敗事例集データベース(現在はSpaceFinderへの移行により廃止)へ転記する手間も不要になりました。
今澤氏開発ワークフローシステムには、開発プロセスに沿って情報や資料を管理し、業務を進めていく役割と、開発プロセスの過程で抽出された課題・指摘事項を集約し、それらの対策までを管理する役割があります。新商品の企画・仕様が固まりサンプルが準備できると、商品部がリスクアセスメントシート(Excel)を作成し、品証に提出。そのシートをシステムに取り込むと記載内容が『新商品情報』画面に展開されます。多い場合は1回で200アイテムも登録することがあります。リスクアセスメント会議を開催して、実際のサンプルを見ながら、安全性リスク、不良・苦情リスク、設計・生産上の課題を洗い出し、『課題・指摘事項管理シート』に登録します。ハイリスク商品の判定も行います。
今澤氏ハイリスク商品の開発プロセスには、試験計画策定、設計検討会、工程リスクアセスメントが加わり、それらの資料と実施記録を専用画面で一元管理します。リスクアセスメントで抽出された課題・指摘事項の対策が完了すると設計検討会を開催。複数部門の異なる視点で対策完了を確認すると共に、開発過程で入手した資料や試験結果についても新たな問題が無いか確認します。
今澤氏『ハイリスク商品』の中でも、エレクトロニクス製品などのように、新しく生産ラインが組まれる商品は工程リスクアセスメントを実施して、実施日と実施記録を登録します。また、生活雑貨については、量産品確認を実施します。QC工程表や工程FMEA、治工具リスト、サプライヤ評価等を実施・作成し、資料を一元管理します。
本社 | 東京都豊島区東池袋4-26-3 |
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資本金 | 67億6,625万円 |
従業員 | 19,370名(臨時従業員等 10,233名を含む/良品計画グループ) |
事業内容 | 「無印良品」を中心とした専門店事業の運営/商品企画/開発/製造/卸しおよび販売を展開。1980年12月、株式会社西友のプライベートブランドとして40品目でデビューした「無印良品」は、現在では、衣料品から家庭用品、食品など日常生活全般にわたる約7,000品目を展開するブランドへと成長している。2019年4月には、世界旗艦店「無印良品 銀座」、および日本初となる「MUJI Diner」「MUJI HOTEL GINZA」を開業し、無印良品の思想を世界に向けて発信。また、「感じ良いくらし」の実現に向けて、団地コミュニティ再生への取り組みや、自動運転バスへのデザイン提供など、活動の幅を広げている。 |
取材日:2019年8月1日
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