株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション
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鉛蓄電池の事業に始まり、2017年に設立100年を迎えたGSユアサ グループ。現在は、鉛蓄電池とリチウムイオン電池という2つの柱を強みに持ち、自動車から人工衛星にいたるまで、その用途は多岐にわたる。第1の柱である鉛蓄電池事業では、地球環境の変化に適した技術革新による更なる成長が見込まれ、生産体制の強化が進められている。今回の事例では、環境対応による新技術の登場等を背景として、グローバル生産準備に、スピーディ・低コストな対応を目指す同社の取り組みをご紹介する。
秦氏近年、燃費規制・CO2排出量規制が一段と強化され、アイドリングストップシステムが普及するなど、耐久性や急速充電性能、充放電特性等に対する技術要求が高度化しています。これは、長い鉛蓄電池の歴史の中でも、かつて無かった変化。顧客ニーズに対応した技術開発を行うことで、まだまだ成長が見込まれます。
大芝氏GSユアサ グループでは、当社の生産技術本部がマザー工場機能を有しており、新製品の量産技術を開発し、海外拠点に展開しています。また、技術・技能・ノウハウを伝承し、人材育成にも取り組んでいます。海外拠点からの設備や設備部品、治工具の見積依頼、及び、量産立上支援については、主管部門である事業推進部経由にて依頼を受けており、設計や見積、受発注業務を行います。従来から見積回答のリードタイムを短縮して欲しいという要望を受けており、業務改善テーマとして取り組むことになりました。以前はリードタイムを定量的に把握できる仕組みがなく、実態把握できないのが課題でした。さらに、リードタイムが長くなる要因を分析したところ、新規受注品については「ノウハウのナレッジ化が不十分で仕様検討に時間がかかる」、リピート品(既製品・受注品)については「見積時に必要な仕様等の知識や情報を組織に蓄積する仕組みがない」という課題が浮かび上がりました。また、競争力を高めるためには、コスト低減活動も必要不可欠であり、さらなるコストダウンによる生産準備・製造ができる生産技術力も求められています。
島田氏見積に必要な情報が不足していたり間違っていると、依頼元に確認する必要があり、時間がかかっていました。頻繁に入れ替わる駐在員や現地社員の間で、過去の設備改修履歴が十分に引き継がれないのが原因。また、我々の側でも、細かな品番等の情報は個人持ちになっており、グローバルな生産準備体制の構築が不十分でした。
大芝氏海外受発注システムは、『VRB伝票』、『交信記録』、『工事等予算見積書』、『社内見積 回答書』という4つの帳票で構成されています。『VRB伝票』に見積依頼内容が記載され、生産技術本部長等の決裁を経て、担当者を割り当て、見積回答や発注検収までの業務フローを進めます。『交信記録』では、部門間・担当者間での仕様確認のやりとりや議事録等を時系列で管理しています。
大芝氏リードタイム短縮の工夫として並列処理タスクを採用。1案件に複数の担当者が割り当てられる場合、従来は紙・Excelベースで直列処理していたため、時間がかかっていました。今は、各担当者が『工事等予算見積書』を起票し、見積内容を入力して関連資料や画像を添付。承認ルートを経て見積確定までを同時進行できます。
湯浅氏1つの案件が複数アイテムで構成され、さらに1アイテムに複数の資産が含まれる場合があります。ですので、アイテムと担当者および『工事等予算見積書』が1:1になるとは限りません。このシステムでは、すべての見積が確定して『社内見積回答書』を起票すると、見積内容がアイテム毎に自動的に集計されます。アウトプットに至るまで、並列タスクを効率的に進められる仕組みとなっています。この内容をもとに、事業推進部から海外グループ会社に見積回答を行います。
大芝氏『交信記録』により、過去の経緯が誰でも時系列で確認できるようになりました。前任者に依頼し、過去のメールを探して転送して頂く必要もありません。この『交信記録』が貴重な情報の蓄積場所となり、「状況確認がしやすくなった、非常に組織力が上がった」という声が事業推進部からも寄せられています。
島田氏『VRB伝票』を起点として各帳票が連携し、仕様を決めた経緯や関連資料等がすべて一元管理されていますので、一度SpaceFinderを使って見積依頼してしまえば、以降の既存品や類似案件は確実にリードタイムが短縮します。使えば使うほど効果が高まる仕組みです。人が替わっても、以前の情報を引き継いで的確な仕事ができ、業務の標準化にもつながります。
大芝氏以前の案件で実際原価が予定原価を上回っていた場合、どこで手戻りが発生したのか、仕様の確認が適切だったのか等、『交信記録』で要因を確認し、再発防止するとともに、次の見積作業に役立てる事ができます。また、海外拠点に設備等を売却する場合、移転価格税制の問題が生じ、価格の合理性について立証できるまで相手国の輸入許可が下りないために、生産リードタイムに影響を与える可能性があります。実際原価を捉える事は、生産準備作業そのものの時間短縮による原価低減、品質トラブルの未然防止、そして、移転価格税制の問題をも回避する事ができ、グローバルなコスト競争力強化においても重要です。
湯浅氏治工具類や部品はリピート購入が多いのですが、そのような場合は前回の『VRB伝票』を検索し、リピートボタンを押すことで、元の情報を引き継いだ新たな『VRB伝票』が起票されます。変更が無い場合は、これで見積作業が完了する、大変便利な機能です。
大芝氏見積対象の品目に関連する過去トラが、『工事等予算見積書』からわずか2クリックで検索できるようになっています。見積を進める流れの中で、スムーズに過去トラを活用できます。過去トラ以外にも、SpaceFinderには18万件におよぶ技術情報が登録されています。ここで活躍するのが関連語検索機能です。当社は2004年に日本電池とユアサ コーポレーションが合併したのですが、工程や設計上の用語が異なっていたため、合併前の文書も確実に検索するためには、両社の旧用語と現在の統一用語を自動変換することが必須。実は、比較検討した製品の中で、この機能を標準装備していたのがSpaceFinderだけだったことも、選定の理由なのです。
大芝氏SpaceFinderの帳票一覧機能を使うことで、今どこで、どのような案件が発生し、どこまで進んでいるかが俯瞰できます。事業推進部では地域毎に担当者が分かれているのですが、他拠点の類似案件でのリードタイムを参考にして、グローバル生産準備の全体スケジュールや、設備、治工具等の製作手配などの業務に役立てています。
大芝氏見積回答が1日2日で完了している案件も多いのですが、KPIとしては、生産技術本部からの見積回答を遅くても5日以内とし、他の業務との兼ね合いにより、その達成率70%を目標として設定しています。運用開始の1年後にあたる2016年4月から翌年3月までを集計したところ、達成率は51%という結果でした。SpaceFinder運用開始前はもっと低かったと考えられます。それが、2017年度は6月までの累計で66%、6月単月で74%に達し、4月~8月の累計では71%を達成しました。今後も、事業推進部との組織横断チームによる改善活動を継続していくことで、更なる効果が期待できると考えます。
本社 | 京都府京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地 |
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資本金 | 330億円(平成28年11月30日現在) |
従業員 | 14,710 名(グループ連結、2017年3月31日現在) |
事業内容 | 自動車用・産業用各種電池、電源システム、受変電設備、照明機器、紫外線応用機器、特機機器、その他電気機器を製造・販売。日本電池とユアサ コーポレーションが2004年に経営統合して設立された。社員と企業の『革新と成長』を通じ、電池で培った先進のエネルギー技術で人と社会と地球環境に貢献している。近年はリチウムイオン電池に注力。2009年には世界に先駆けて車載用の量産化に成功したほか、航空・宇宙・船舶など、幅広い分野で製品を提供している。基幹事業である鉛蓄電池では、ワールドワイドで第二位のシェアを獲得している。 |
取材日:2017年8月1日
受付時間 9:00-17:30(土・日・祝除く)
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