相互に依存する反応が複雑に競合する反応機構を明らかにし、化学反応速度論に基づいて反応を理解するために、量子力学から反応速度論への橋渡しで重要となるのが、「反応物と生成物の間のエネルギー地形上の鞍点に対応する個々の素反応の遷移状態の同定」と「活性化障壁の高さ」です。BIOVIA Materials Studio FlexTS には、ケンブリッジ大学の研究者らにより開発されたプログラムをベースにした信頼できる反応経路計算手法が実装され、最小エネルギー経路や遷移状態の計算、多段階反応の同定などが可能になりました。段階的な計算手法が組み込まれており、まずは最小エネルギー経路を同定してから、遷移状態や、個々の遷移状態に関連する中間状態を同定します。
FlexTS で遷移状態に関する情報を取得していれば、DMol3 Reaction Kinetics タスクを実行することで、BIOVIA Materials Studio のCantera モジュールや Kinetix モジュールへの入力となる速度係数を取得することができます。
FlexTS による遷移状態探索における遷移状態および反応経路の探索ステップ
フェーズフィールド法はこれまで長く用いられてきた手法であり、メソスケールでの微細構造の状態変化を対象とし、固体材料の凝固や相変態、樹状突起成長、結晶粒の粗大化や、成長などを予測するものです。微細構造を予測するために、BIOVIAMaterials Studio PhaseField には OpenPhase Solutions 社のOpenPhase Core ソルバーが搭載されています。このソルバーには、十分な検証作業が行われた完成度の高いフェーズフィールド法が実装されています。フェーズフィールド法では材料をメソスケールで、粒子の分布として表現するため、個々の粒子は結晶相の組成や配向性と対応付けられます。相の熱力学的性質や動力学的性質を記述する方程式を使用することにより、相の時間的な変化を明らかにすることができます。これにより、そうした特徴を表現する数多くの物理的パラメーターを測定あるいはシミュレーションすることができます。
Pipeline Pilot の Materials Studio Collection ではフェーズフィールド・シミュレーションのためのプロトコルが提供されており、いずれもMaterials Studio 2021 の Pipeline Pilot Connector を介して利用できます。これらのプロトコルの使い方を説明する 2つのチュートリアルが、Materials Studio Online Help に追加されています。BIOVIA Materials Studio PhaseField を使うと、分かりやすいインターフェースを介して成分相や粒子の設定、熱力学的および動力学的データの入力、温度、圧力条件などを簡単に定義することができます。
フェーズフィールド法の重要なアプリケーションの 1 つが金属積層造形です。BIOVIA Materials Studio PhaseField を利用すると、パウダーベッド方式の積層造形において微細構造の印刷条件に対する依存性を把握できます。この方式では、合金粉末の個々の層がレーザーや電子ビームによって溶かされ、高温になったあと温度が降下します。微細構造をシミュレーションすると、材料の組成と製造条件を同時に設計できるようになります。その目的は、積層造形で作られる部品に求められる仕様を満たすことです。BIOVIA Materials Studio PhaseField で微細構造を予測すれば、粒子のサイズや相分布を直接見ることができます。また、そうした微細構造から、代表体積要素 (RVE) モデルとして材料特性を均質化して表示することも可能です。PhaseField で RVE の SIMULIA Abaqus 向けデータを生成し、作業を効率化することもできます。
BIOVIA Materials Studio 2021 を導入すると、研究者は BIOVIA Materials Studio CASTEP を使って原子スケールでの合金の熱力学特性を第一原理計算やクラスター展開法に基づいて予測し、BIOVIA Materials Studio PhaseField を活用して金属鋳造や積層造形などの巨視的な世界への連携を実現できます。こうした材料の原子レベルからマイクロスケールまでの包括的なシミュレーションでは、新たに微細構造に対する加工条件による影響を取り込めるようになり、部品製造における合金の開発・認証作業を大幅にスピードアップすることができます。
BIOVIA Materials Studio PhaseFIeld のシミュレーション結果。
アルミニウム- マグネシウム合金の冷却過程での核形成と成長を示しています。
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破壊靭性 (K IC) と弾性率の間の相関関係がモデル化され、CASTEP と DMol3 に実装されました [Niu (2019) ] 。
脆性が高いセラミックスやイオン性物質の硬度を評価することができます (赤い●は Materials Studio の結果、緑の■はNiu らの結果)
Cantera をバージョン 2.4.0 に、Python をバージョン 3.8.1 に更新しました。
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新しい Pipeline Pilot プロトコルを使用して、粗視化シミュレーションで使うための高分子ネットワーク構造を作成できます。
実験的に測定された結晶構造の外部データベース(Crystallography Open Database) や結晶構造や特性の計算結果を含む外部データベース (Materials Project) を利用するためのコンポーネントやサンプル・プロトコルが追加されました。
逆非平衡分子動力学法に基づいて熱伝導率を計算するためのプロトコル (Calculate Thermal Conductivity) が追加されました。
Materials Studio Collection 2021 で新たに利用できるようになった熱伝導率計算のためのプロトコルでの高温層と低温層の設定
活用分野に最適なMaterials Studio製品をご紹介
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