Qube!のクラスタ機能を活用し、平日24時間レンダーファームがほぼフル稼動。ジョブ優先度の階層的な制御により、調整や設定の手間も削減できる。Qube!導入後、レンダリング時間が3~4割は短縮した感覚。
イマージュは、フルCG作品をはじめとする業務量の増大により、レンダーサーバを増設。その影響もあり、レンダリング管理ツールの安定性の低下が顕著になっていた。「騙しだまし使っている」状況でプロジェクト進行に支障をきたし、ツールの将来性も懸念されたことから、レンダリング管理ツールのリプレースを決断。入念な検討の結果、導入されたのがQube!である。
古川氏:当社では、以前から他のレンダリング管理ツールを使用していましたが、レンダリングサーバを増設するにつれてエラーが増え、不安定で使い勝手的にも問題がでていました。サポートもなく、エラーが出るとレンダリングをやり直すしかありません。しかもバージョンアップの度に不安定さが増していくので、管理ツールをリプレースしなければだめだな、と考えました。
磯部氏:ジョブが止まったり管理マシン自体が落ちることが頻繁で、人が気づけばまだいいのですが、夜間にエラーが発生した場合は翌朝出社するまでわかりません。そのため、締切り直前のレンダリングジョブが夜間に止まってしまい、急遽、他のプロジェクトで予約しているマシンを使わせてもらうといった対応に追われることになっていました。
このような問題を解決するために、2013年頭に各種レンダリング管理ツールのリサーチと検証を開始。検討の結果、2013年7月にQube!が導入された。選定のポイントは、Qube!の安定性と機能、そして、ダイキン工業のサポートである。
磯部氏:選定理由の中で重要度が高かったのがクラスタ機能です。この機能を使うと、あるプロジェクトに割り当てたマシンでも、空いている場合は他のプロジェクトのジョブを実行できます。当社では常時10 ぐらいのプロジェクトが進行しているため、プロジェクト毎に割り当てマシンを固定してしまう運用では、全体的な稼働率が低下してしまいますので。
もう一つの選定ポイントであるサポートでも、ダイキン工業への評価は高かった。
磯部氏:比較検討した他のツールの中には、質問しても回答が返ってこなかったり、海外の開発元と直接やりとりしなければならないものがありました。レンダリング管理ツールは作業の根幹にかかわるソフトなので、サポートが良くなければ導入は難しいです。その点、ダイキン工業のサポートはテスト段階からすごくレスポンスが良く、細かいパッチも送ってくれました。大量の質問にも、きちんと一つ一つ回答してもらっています。
古川氏:ダイキン工業は開発元と緊密な関係を構築しているという印象を受けています。正直にやりとりできるのは強みで、開発元から「認識しています」という回答が返ってくると、次バージョンで反映してもらえるんだろうな、という期待感があります。これから期待できるという安心感も決め手の一つでした。
現在、イマージュでは、Qube!を100ライセンス使用。レンダーサーバ60台に加え、CGアーティストのマシン50台にもQube!をインストールし、それらの中からトータル100台でレンダリングジョブを実行している。
磯部氏: CGアーティストが帰宅時等に、自席PCで所定のツールをクリックするとQube!のジョブを受付け、再度クリックするとジョブ受付を解除する仕組みを構築しています。また、操作していない時間が1時間続くと、自動的にジョブ受付状態になります。
~クラスタ機能がリソースのムダな空きを防止~
Qube!のクラスタ機能は、あるプロジェクト(A)に割り当てられたマシンでも、空いている場合は他プロジェクト(B)のジョブを割り当てる。その後にプロジェクトA のジョブが投入されると、プロジェクトB のジョブは他の空きマシンに自動的に移動して実行される。
磯部氏:以前使っていたツールにはクラスタ機能が無かったので、自分が予約しているマシンでは優先度を高く、その他のマシンでは優先度を下げてジョブを投入するというように、運用でカバーしていました。Qube! では、そのような煩雑なことをしなくても、クラスタにジョブを投げるだけで済みます。
Qube!のクラスタ機能を活用することで、プロジェクトの優先枠を保ちつつ、レンダーファーム全体を有効活用することが可能。その効果は稼動実績に如実に現れている。
磯部氏:レンダーファームに組み込まれるマシンの数をグラフで確認すると、日中はほぼ60(レンダーサーバの数)で、夜間に110(CGアーティストのマシンを含めた数)になります。ジョブが割り当てられているマシン数も、その推移に連動し、ほぼ同じ動きをしていることがわかります。(※下図のグラフ「Qube!ワーカーの稼動状況」参照)
実行するジョブがなくなる休日等を除き、レンダリングマシンの稼働率は、ほぼ100%だ。
磯部氏:以前は、締め切りが危ないかな、という時もありましたが、今はそのようなことはないですね。空いているマシンで勝手にどんどんジョブが回るので。Qube!導入前は、安全を見て多めにマシンを予約する傾向にありましたが、今はそういったことも無くなりました。
足りないだろうという予測だけでマシンをレンタルするといったムダも、Qube!導入後はなくなった。
~階層クラスタの活用で、クラスタ内でのジョブ優先度も制御~
古川氏:例えば、同じプロジェクトの中でも、翌日にチェックや納品を控えている等の最優先のジョブと、納期等に余裕がある優先度の低いジョブがあります。また、シミュレーションジョブは重い事が多いので、先に実行したいといった場合があります。このような設定を付けてジョブを投入することで、同じクラスタのジョブの中でも、優先的に実行させることができます。
階層クラスタ機能のないレンダリング管理ツールを使用していた時は、「急ぎのジョブを優先するために他のジョブ投入を待ってもらったり、終わったので投入していいとアナウンスをするなど、手作業での運用管理をしていました。そういった意味でも非常に効率的になりました」と古川氏は語る。
~ライセンスのリソース管理やジョブの依存関係付けなど、便利な機能で業務を効率化~
磯部氏:ソフトやプラグインの中にはライセンス数に制限のある場合があり、例えばSoftimageは他のCG ツールより当社所有のライセンスが少ないので、レンダーサーバ全部でジョブを実行することはできません。そのため、以前は、人手でライセンスの空きを確認してジョブのスロット数を制限しないとLicence Errorが非常に頻繁に出ていましたが、Qube!はライセンス数を管理し、空きライセンス数の範囲内で最大限にジョブを実行してくれます。
Qube!の導入により、Licence Errorは発生しなくなった。ジョブのディペンデンシー(依存関係付け)機能も作業効率化に貢献している。
磯部氏:シミュレーションが終わった後にレンダリングを実行し、素材のレンダリングデータが揃ったらコンポジットを実行するといった一連の処理を、ディペンデンシ-機能を使って効率化しています。以前は、前の晩にレンダリングジョブを投げ、翌日に素材が揃っているのを確認してからコンポジットのジョブを投げていましたが、一晩でコンポジットまで終わるようになりました。
~AfterEffectsでも効果~
磯部氏:以前は、AfterEffectsのレンダリングはレンダーサーバには投げず、CG アーティストのマシンで処理していましたが、Qube!導入を機にレンダーサーバのプラグインを統一するなど、環境を整備しました。その結果、試しにすべてのレンダーサーバを使ってAfterEffectsのジョブを実行したところ、自席PCでプレビューするよりも速くレンダリング終わってしまったほどで、効果がすごくでてきました。
古川氏:例えば、AfterEffectsのレンダリングで、1フレーム3秒かかるシーンで10秒のムービーをプレビューしようとした場合、自席PCでのプレビューは3秒×300フレーム=900秒=15分かかる計算になります。これをQube!を使って100台でレンダリングすれば計算上は9秒で終わることになります。当然、100台のレンダーマシンが空いている事が条件になりますので極端な例ではありますが、タイミングによってはそれ程非現実的な話ではありません。
「今後は、コンポジットのレンダリングジョブもたくさん流れると思います」と磯部氏は語る。
~レンダリング時間が3~4割は短縮した感覚~
磯部氏:ジョブの管理がインテリジェントで、空いているマシンにどんどんジョブを回すので、レンダリング時間は確実に短縮していると実感しています。以前のように、「急遽貸して」といった話はなくなりました。
古川氏:以前よりも、かなり多くジョブが回っていると思います。マシンを確保しなくても回ります。重い仕事をしているデザイナーからは、Qube!が無かったら危なかったといった意見も出ています。エラー発生時の再設定など、明らかにデザイナーが操作する手間は減っていますし、以前はマシンが回り続けていることはなかったので、確実にムダも減っています。数字で比較したわけではないですが、レンダリング時間は3 ~ 4 割は短縮している感覚です。
~自社で使いやすくカスタマイズ~
磯部氏:当社では、比較的短期のプロジェクトも多く、時々でレンダリングジョブの量が増減しますので、プロジェクト責任者が定期的に会議を行ってマシンの割り振りを調整します。割り振り変更は、所定のExcelファイルをQube!に直接読み込むツールを作っており、そのファイルを更新すると指定した間隔でクラスタとグループ設定が変更されるようにしています。
これにより、管理者不在の場合でも、プロジェクトリーダーやプロデューサが設定を壊すことなく更新することができる。
磯部氏:今後は、CGソフトからジョブを投げるサブミット画面をオリジナルのものにしていこうと考えています。既に始めていますが、当社では使わない項目を非表示にするなど簡略化をさらに推し進めていく予定です。
CG制作プロダクションとして1990年にスタートし、現在では、TV、映画、ゲーム、アミューズメント、WEB、携帯等のメディアで使われるコンテンツを制作。コンテンツの企画、制作、更新、運用および、システム開発など多角的な業務を展開し、特に、映像+WEBに代表されるクロスメディア分野では実写の映像制作を含めワンストップで受託可能。技術・センス・クオリティで、「お客様の事業の成功に寄与する事」を目指している。
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